カテゴリ:本・映画( 117 )

『となり町戦争』 三崎亜記

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【となり町との戦争のお知らせ】が町の広報誌に掲載されていた。
戦争は静かに始まった。戦争といっても町興しのようなもので、役所に管轄管理されているのだが、しかし広報誌の戦争による死者の数は日増しに増えていく。そんなある日、僕は【戦時特別偵察業務専従者】に任命される。役所の香西さんと共に暮らす中、見えない戦争に次第に巻き込まれていく。

着眼点は抜群にいいと思います。地球上いたるところで常に行われている戦争、それはちっともリアルさを感じさせずいつも他人事で、戦争はいけないと言いつつ、そんな対岸の火事みたいなものには見て見ぬふりの自分を深く恥じいる気持ちがします。
が、しかし、なんて申しましょうか・・感情のリアルさもないような気がして、どうもいまいち入り込めないとこじゃないかと。登場人物からは怒りも悲しみも切なさも感じられず、淡々としすぎているのがマイナス点ですね。
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by ruriwo_m | 2009-11-14 22:37 | 本・映画

『彼女がその名を知らない鳥たち 』 沼田まほかる

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十和子は同居人の陣冶が虫唾が走るほど嫌いだ。黒い顔も中途半端な天然パーマもだらしのない食べ方も水虫も咳も痰も小さい陰嚢も全てが気色悪い男、その上他人から蔑まれていることに気付かず小心者のくせにデカいことばかり吠える、それが陣治だ。十和子はそんな陣治にあらん限りの悪態と罵声を浴びせる。陣治は卑屈な笑みを浮かべ十和子の世話をする。十和子はなにもしない。レンタルしてきた映画を部屋で転がって観ているだけの日々。こちらも壊れかけの駄目人間だ。ヘドが出そうなほどどうしようもない中年カップルの話が延々と続く。
この先、この陰々滅々な物語のラストが、あんなにも苦しいような純情と愛情とを鮮やかに描ききることになるなんてとても想像できなかった。まったく脱帽です。
共感を覚えるのは、十和子は駄目な方を自ら選んで生きていること。なげやりのようだったり運がなかったように見えても実はやじろべえのように不安定ながら自分自身で負のバランスを保っているのだと思う。

この小説は2006年に出版されたものですが、すでに絶版になってました。文庫本も出てません。出版社も書店もこういう良書に力をいれて多くの人に読まれるようにしてもらいたいものです。
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by ruriwo_m | 2009-09-29 14:09 | 本・映画

モウソウ フウフ セイカツ

読んでいるうちに妄想と現実の境界があやふやになってくる。
誰かが私の頭を覗いて切り取ったのかもしれない。
これは、私と蛭子さまだ。
二人の悲哀なのだ。
底なし沼に沈んでいく。
間違いなく本年度のベスト小説だな、コレは。
お気に入りの作家さんがまた一人増えた。
本の紹介はまた後日。
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by ruriwo_m | 2009-09-18 13:33 | 本・映画

『1Q84』 村上春樹

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「こうであったかもしれない世界」
塾の数学講師をしている天吾は、小説家志望の青年でもあった。
応募されてきた「空気さなぎ」という作品を新人賞のとれる作品に仕上げてほしいという編集者の要望により、原作者の女子高生「ふかえり」と共にこの計画に関わっていく。いけないことと知りつつ、「空気さなぎ」の魅力に取り憑かれてしまったから。
もう一つの物語は「青豆」を主人公とするハードな世界。依頼を受けて人間を抹殺する。ある日警官の制服が以前と違うことに気付く。ここはどこの世界なんだろう。今までいた世界とは別の世界なんだろうか。と悩みながら。
宗教団体の密室的な事件から物語は動き、天吾と青豆も近づいていく。二人には幼い時期にお互い恋心を抱いた過去があった。。。。

あらすじを追うとこんな感じ。感想を述べると、一気には読めた。ハルキの世界だな~と思った。でも読後に残るものがないんですよね~。いろんなことがあるのに物語が消化しきれなくて中途半端で残念。続編があるのではと疑いももたれるくらい。登場人物に惹かれるものがないのも残念。
う~ん。私がハルキについて行けなくなったのかなあ。
読まれた方、どうでしたか?
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by ruriwo_m | 2009-08-24 12:09 | 本・映画

『IN』 桐野夏生

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作家のタマキは、自身の不倫恋愛における「抹殺」を『淫』という小説に書こうとしていた。
そして資料として先人の作家、緑川の書いた『無垢人』に描かれる愛人「○子」を探しながら、果たして恋愛における「抹殺」とはなんなのか、追求の旅にでる。
『恋愛が終わるとき...人は仏のような「いい人」になってしまうのです。僕にはその方が怖かったです』...このくだりが恋愛の本質のような気がします。愛情も、憎しみも、全て消えた証拠。

心の奥底がじわりじわりと腐食されていく快感で次々と頁を捲ってしまう。桐野さんならでは。
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by ruriwo_m | 2009-07-15 19:37 | 本・映画

ドッチヲトルカ

ハルキの本はまだ回ってこない。
友人曰く、「読み出すと眠くなっちゃって.....」
「それって大人になったってことだよ」というと、
「ダンスダンスダンスの頃なんて発売日に走って本屋に買いに行ったのに」とちょっぴり寂しげとも諦めともとれる顔で笑った。
ハルキの新作に興味がなくなってどれくらいかな~。でも昔っぽいというレビューが多いのでまだ期待してるんだけど。
そうこうしてる間に、桐野夏生さんの新作「IN」が届いてしまった。これは濃そうだ。本から邪気がムンムン漂ってくる。
ハルキを読む前にこっちを読んじゃっていいのだろうか。ハルキが物足りなくなってしまうんじゃないかと心配する。
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by ruriwo_m | 2009-07-07 11:31 | 本・映画

『えびすビンゴ』 蛭子能収+観察の会

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町で見かけたあんな人、こんな人、見つけ次第すぐさまチェック!タテヨコナナメいつでもビンゴ!
☆おばさんのしぐさ編☆
「急に立ち止まる」
「円陣を組んで話す」
「念のためスーパーの袋を持ち歩く」
「しきりとうなずく」
などなど、あーあーと頷きながら、はたしてこの漫画ほんとに面白いんだろうかと少々疑問に感じながら読んでいたら、あとがきにて
「描いているうちに意欲が低下してきちゃって、でもハッパかけられて編集部に通ってやっと描きました」
....ってそれでいいのか蛭子さん!1050円返せ!
でもまぁいいや。私は好きな人にはとことん甘いのだ。
(売れないだろうなこの本)
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by ruriwo_m | 2009-06-17 11:04 | 本・映画

『Marieの奏でる音楽』 古屋兎丸

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この物語の舞台、リピトの地には古くからマリィの信仰があった。そして機械工房の街ギルで、ピピは手に印をもつカイと共に成長していく。ピピのカイに対する気持ちは年齢と共に深まっていくが、カイは特殊な能力を持ち、信仰の対象マリィに傾倒していくのだった。
マリィの信仰とは何なのか?カイの印の意味は?
どんでん返しの結末も、思えば伏線がいくらもあって、また最初から読み返してしまいます。

最近の兎丸さんの漫画はイラストのようにきっぱりとしていますが、この頃はまだ柔らか味のある絵柄で、こういうファンタジーな作品にぴったりです。
兎丸さんというと、ギャグ漫画や少女特有の痛みを描く漫画家として知られていますが、私が最初に出会った作品もファンタジー色の強いもので、Marieもそうですが、生まれてきた意味や生きていく意味を問う哲学チックな物語で読み応えがあり大好きです。
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by ruriwo_m | 2009-06-14 11:16 | 本・映画

『十九歳の地図』 中上健次

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集金に行った。女が出てくるのが遅い。ムカツク。「犬のように叩き殺されても泣き言をいうな」
「....はい、東京駅ですが...」 「いいか!めちゃくちゃにしてやる!ふっ飛ばしてやる!ふっ飛ばしてやるからな!」
公衆電話から声を押し殺し、あるいは激高し叫ぶ、新聞配達の青年。
配達先の白地図を作り、気に入らない配達先には×印をつけ、制裁を加える。鬱屈した心を吐き出すように。
ちょうど一年前、秋葉原の事件で、歓楽街など人々が楽しく集いそうな箇所に容疑者が地図上に×印をつけていたことをニュースで見たときにこの小説を思い出しました。容疑者が読んでいたかはわかりませんが。
レビューで書いていた人がいましたが、「人間の隠しておきたい負の感情が渦を巻いて存在している」そんな作品です。けして読みやすいとはいえないし、読んでいると気が滅入ってしまうけれど、絶対に最後まで読まなければいけない、という任務みたいなものを感じて、とはいえ読みづらい=つまらないということではなく、本を読むものとして素通りしてはいけない、そんな感じです。
映画化もされてます。

偶然に中上健次の名前を夕刊で拾いました。
「大逆事件」の連載記事で運動家の親類というふうに説明されていて、この小説の表題作とは別の作品を読んで、そんなに古い時代の人ではないのに明治~大正時代の生活雰囲気なのが、生まれ育った環境だったことを今日ほんとに偶然知って、読み終わった直後にこれというのは、なにか偶然ではなく必然だったような気持ちがして、他の作品も読んでみたいと思いました。すぐには無理だけど、この気持ちが薄れないうちに。
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by ruriwo_m | 2009-06-01 23:32 | 本・映画

ハルキイズム

村上春樹さんの最新作が今日発売らしい。なのに喰いたい気分にならない。心の中は「ゼラ!ゼラ!ゼラ!!!」でいっぱいだから。
正しい人はタミヤが好きだろう。私だってタミヤが好きだ。正しくてかっこよい。「俺たちの光クラブを守ろう!」君こそが真のリーダーだ。だけど私はゼラを求めるのだ。「頭のネジがゆるんでるんだよ」孤高、独裁、嫉妬、猜疑心、破滅、全ての邪な心がなぜかとても人間的に思えて、泣けてくる。
『ライチ☆光クラブ』ネット界でもカルト的なサイトがあり、集う人はそれはもう光クラブを神聖化しちゃっていてヤバイかんじ。毎晩枕元においてうっとりと眺めてたんだけど、ただ今布教の旅に出ております。早く帰ってきて~ゼラ様!
あ、こんなに激お薦めしてますが、血しぶきと脳髄・内臓噴出が全編にわたって描かれてますんで、加えてBL的シーンもあり、受けつけない人には薦めません。
そんで『1Q84』 誰か読んでみて面白かったら貸してください。
え、そんな扱い....?かつては春樹さんを神聖化してた私なのに、もう引き返せない....
....でも読んだらきっと「心が震える」とか言っちゃうんだな、これが(笑) それに『ノルウェイの森』の映画も観にゆきたいし。松ケンは「ワタナベくん」っぽいと思う。
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by ruriwo_m | 2009-05-29 23:41 | 本・映画